ティールームの秋のパッケージは、イラストレーターの利光春華さんが描く「森のティーパーティ」。華やかなイラストが描かれた制作背景などをおうかがいしました。

Afternoon Tea TEAROOM(以下Afternoon Tea):今回は"森のティーパーティ"がテーマですが、それぞれのパッケージデザインに込めた思いを教えてください。

利光春華さん(以下利光さん):昨年、はじめてのビジュアルブック『Ribbon(リボン)』を出版させていただいたのですが、今回のアートワークはそのスピンオフのような存在でもあるんです。なので、最初に考えたのは『Ribbon』の秋のページの世界観と共通する1枚絵のパッケージ。5つの箱が揃って森が完成するデザインを描き、それが他のパッケージデザインのアイデアにもつながっていきました。

Afternoon Tea:Seasonal TEAのことですね。

利光さん:そうです。5つの箱を横に並べてみると、森の世界がつながるようになっています。今回はラ・フランスやマロンなど、それぞれのフレーバーもアイコニックだったので、フレーバーのイメージに合うベースカラーを最初に作り、その色から想像を広げて森の世界を作っていきました。秋だけど、寂しいイメージにならないよう、森の奥ではなく、開けた場所でのティーパーティを描いています。

Afternoon Tea:パッケージごとに動物も違うんですね。

利光さん:はい。マロンにはリス、ラ・フランスには鹿が似合いそう、など私が想像する森の風景を自由に描かせていただきました。最初はAfternoon Teaさんの商品をどう魅力的に見せられるかに苦戦しましたが、その感覚を掴んでからはスラスラとイラストが浮かぶように。ノンカフェインの紅茶には、お花とか植物とか柔らかい雰囲気が似合うなあ、など森の世界を描く時間は楽しかったです。

Afternoon Tea:利光さんがイラストを描くようになったきっかけを教えてください。

利光さん:高校生の時にアルバイトをしていたドーナツ屋の看板作りです。今回のお仕事とまさに一緒で、そのドーナツ屋のメニューの美味しさや新商品の魅力を毎回一枚の絵で表現していました。それまではイラストに目を向けたことがなかったんですが、そのときに「あ、得意なんだ」と実感。絵を描いているときの楽しい気持ちが忘れられず、そのままこの世界へ足を踏み入れました。

Afternoon Tea:利光さんのイラストは幸せな雰囲気にあふれる色使いも魅力です。インスピレーションの源は何でしょう?

利光さん:特にはないですが、意識せずに描くとこの色使いになります。透明水彩を使って塗っているので優しい仕上がりになっているのだと思います。『Ribbon』も透明水彩を使って、とてもたくさんの色数で描きました。1ヶ所色を決めて塗ると、次に周りの色を何色で塗ると良いかが自然と浮かんできて、その連続で1枚の絵が完成していきます。今回Afternoon Teaさんとコラボレーションさせていただいたイラストもそうですが、カラフルな世界観で描けるのはとても楽しいです。

Afternoon Tea:「アフタヌーンティー7デイズコレクション」には、まさに『Ribbon』の世界が反映されていますよね。7種類の紅茶が入ったボックスはAfternoon Teaの定番ですが、シーズンごとにアーティストの方とコラボレーションしたパッケージが話題なんです。今回はまるで一冊の絵本のような仕上がりです。

利光さん:はい。『Ribbon』は春から始まる本ですが、この時期に登場する「アフタヌーンティー7デイズコレクション」は秋から始まって夏に終わるストーリーになっています。全体のイメージは『Ribbon』に沿っていますが、メッセージもすべて一新。「今日もいいことありそう!」と思ってもらえるような言葉を考えて、添えました。まるでもう一度『Ribbon』を作ったみたいで、本当に楽しかったです。この他にもいくつか『Ribbon』の世界を反映したアイテムを作らせていただきました。「ティーポーチ」は旅行先や外出先に手軽に紅茶を持っていけるようデザインされたものですが、小物入れとしても活用できるようになっています。

Afternoon Tea:ずっと使えるかわいいパッケージは、嬉しいですよね。

利光さん:私はこれに母子手帳や医療証を入れたいなと思っています。子供が二人いるのですが、かわいい母子手帳ってあんまりないんですよ。お薬手帳や保険証も入るので、便利に使えそうです。もちろん、紅茶も持って行きます!

Afternoon Tea:利光さんも普段から紅茶を楽しまれるんですね。

利光さん:はい。自宅でずっと作業しているので、気分転換を含めたティータイムは日々の暮らしに欠かせません。特に15時くらいにはめまいがするくらい集中力が切れるので(笑)、そんなときに香り高い紅茶があるとすごくリフレッシュできます。

Afternoon Tea:好きな紅茶はありますか?

利光さん:「アフタヌーンティー7デイズコレクション」にも入っている「ファイブオクロックティー」が大好きです。癖がないわけじゃないけど、すっきりしていて、いつでも爽やかな気分になれる。Afternoon Teaのスタッフの方に美味しい紅茶の淹れ方を伺い、それを実践するようにしたら、ますます紅茶が好きになりました。暑い時期には美味しいアイスティーにも挑戦しました。

Afternoon Tea:ティーカップも気分に合わせて選んでいるのですか?

利光さん:そうですね。紅茶選びと同じで、ティーカップも私の気分転換に一役買っています。イタリア生まれの「セレッティ」のカップは柄が半々になった個性派。このデザインが好きで何個も集めています。「頑張るぞ!」と気合いを入れて仕事に取り組む前に使うことが多いです。もうひとつは、九州の焼き物産地の方が熊本を元気にしようとして作ったもの。何度落としても割れない丈夫さで重宝しています。

Afternoon Tea:こんなに繊細でたくさんの色が使われた利光さんの作品には、やはり気合いや集中力が必要なんですね。

利光さん:通常、下絵を完成させてから色を加えていくのですが、色を塗っているときが一番神経を使いますね。私は一番細い筆ですべての絵を描いているので、集中しないと大変なことに。でも細かく水彩をにじませることで微妙な色ができて、きれいに仕上がるんですよ。

Afternoon Tea:なるほど。9月のイベントでは、そんな利光さんのテクニックも伺うことができそうです。

利光さん:日比谷コテージで行われる「秋の日比谷コテージで学ぶ 利光春華×Afternoon Tea TEAROOMワークショップ」では、塗り絵のワークショップを行う予定です。水彩画を教えるイベントは過去にやらせてもらったこともありますが、参加される方は皆さん個性的な色使いをされるので、いつも刺激をもらっています。今回もどんな色合いに出会えるか楽しみです。

Afternoon Tea:今回はティールームの店頭ディスプレイにも利光さんのアイデアが反映されているので、ティールームの店頭でも『Ribbon』の世界観を楽しむことができますね。

利光さん:森で木に実っている果物を摘んでいくようなイメージで、紅茶やお菓子のパッケージが手にできたら楽しいだろうと思い、ディスプレイさせていただきました。人形劇のように、何層にも重なったアナログ感が好きなので、それをディスプレイで表現できて嬉しいです。おとぎ話のような不思議な空間を楽しんでいただければと思います。